近年、台風やゲリラ豪雨、豪雪などによる自然災害が増加しており、それに伴って住宅への被害も増えています。リフォーム会社にとって、こうした被害に対する修理や改修の提案において、火災保険を活用できるかどうかは大きな付加価値となります。
しかし、火災保険はすべてのリフォームに適用されるわけではなく、保険金支給のためには複数の条件を満たす必要があります。本記事では、火災保険が適用されるリフォーム工事の条件や、リフォーム会社としてお客様に案内すべきポイント、申請時の注意点について詳しく解説します。

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目次
火災保険でリフォームが可能になる条件とは
火災保険とは、住まいが火災の被害に遭った際や落雷・破損や爆発、風災、雪災などの損害リスクに備えてマイホームを守るための保険です。建物に偶発的に起きた損害に対して補償が受けられる保険であるため、基本的に経年劣化や老朽化などを原因としたリフォームは火災保険の支給対象となりません。
以下の条件を満たすリフォーム工事であれば、火災保険の補償対象となる可能性があります。
【火災保険が適用される基本条件】
・火災保険の補償対象となる損害であること
・突発的な損害であること
・建物に損害が実際に発生していること
・保険契約の補償範囲に含まれている損害であること
・保険契約期間内の損害であること
・損害発生から一定期間のうちに申請すること
火災や落雷、風災などによって建物などが被害を受けた場合に、元の状態に戻すためのリフォームであれば、火災保険を利用してのリフォームが可能です。ただし、火災保険の適用条件や適用範囲は保険によって異なるため、事前に契約している火災保険の内容を確認しておくことが重要です。特に、自然災害等によって被害を受けた家財に対しては、「家財補償」を付けていないと補償されません。
また、上記の適用条件に当てはまっていても、以下の項目に当てはまらない場合は、適用対象外となることがあるので注意が必要です。
【注意点】
・原状回復を目的とした修理・改修であること(快適性アップなどグレードアップ目的ではないこと)
・損害の証拠を提出できること
・修理前に保険会社へ連絡し、査定・申請を行っていること
上記の条件をもとに、さらに理解を深めるために具体的なケースを挙げてみていきましょう。
【リフォームで火災保険が適用されるケース】
・台風で屋根や壁がくずれて家財も壊れたので改修した
・雪の重みで屋根や雨どいが壊れたので改修した
・突風で窓ガラスが割れて、室内にあった家財が使えなくなったので窓ガラスと家財を買い替えた
・落雷で家電(テレビやエアコン)が故障したので新しく購入した
・水道の破裂で水漏れをしたので改修した
・隣家の火災によって自宅の外壁が一部損傷したので外壁を修理した
・車が家に突っ込んできて壁や室内が壊れたので改修した
【リフォームで火災保険が適用されないケース】
・経年劣化や老朽化により屋根や外壁が傷んだため改修した・雨どいが古くなってきたので交換した
・台風が発生する前から続いていた雨漏りを修理するため、屋根を補修した
「火災保険の対象の損害であること」「実際に災害等によって損害が発生していること」「原状回復を目的としたものであること」の要件をクリアしないリフォームは火災保険の補償の対象とならないので注意しましょう。
また、地震や噴火、津波による損害は火災保険の対象外です。これらの被害によるリフォームに対しては地震保険への加入が別途必要となるのでご注意ください。
次にさらに詳しく解説していきます。
火災保険リフォームで満たすべき主な条件一覧
火災保険を上手に活用すれば、思わぬ自然災害などで生じた修繕費用の一部を補償してもらうことができるため、リフォームにかかる経済的負担を大きく軽減することが可能です。
ただし、保険金が支払われるためには、いくつかの重要な条件を満たしている必要があります。
ここでは、実際に火災保険を使ってリフォームを行うために満たすべき主な条件について、具体例も交えながら分かりやすく解説します。
自然災害による被害であること
火災保険の補償対象となるリフォームは、自然災害による被害の原状回復を目的としたものであることが条件です。
「火災保険」なので「火災」にしか対応していないと誤解している方も少なくありませんが、火災(延焼も対象)以外にもさまざまな突発的な被害を幅広くカバーしています。
【火災保険の対象となる代表的な自然災害】
・落雷
・風災(台風・突風・竜巻・暴風など)
・雹災
・雪災(積雪・雪の重み・雪崩など)
ただし、火災保険は地震や地震による火災・倒壊・液状化などの損害、津波や噴火などの自然災害は補償対象外なので注意が必要です。
どんな自然災害によって生じた損害がリフォームの対象となるのかを把握しておくと、修理をする際にスムーズに対応しやすくなります。ただし、契約内容や補償範囲によって適用されるかどうかが異なるため、保険契約をしっかり確認することが重要です。
契約内容によって、火災保険では自然災害だけでなく、以下の事象による損害が発生し、リフォームが必要となった場合も補償対象となることがあります。
【自然災害以外の火災保険の対象となる損害】
・破裂・爆発
・水ぬれ(水道管破裂・給排水設備の事故など)
・外からの飛来・落下・衝突(倒木・飛来物など)
・他人の車の衝突による建物損害
自然災害以外にも火災保険を利用したリフォームは可能であることも覚えておきましょう。
被害が発生してから3年以内に申請する条件
火災保険には請求期限(時効)があり、被害を受けてから3年以内に申請を行わないと補償の対象外になってしまいます(保険法 第94条 保険金請求権の消滅時効)。
請求期限が設けられているのは、火災や自然災害による損害が発生してから一定期間が経つと、被害の状況を正確に調査することが難しくなり、適切かつ迅速な保険金の支払いが困難になるためです。
災害直後は生活の再建や各種手続きなどに追われ、保険会社への連絡が後回しになることも少なくありません。しかし、申請を忘れたり、期限を過ぎてしまうと本来受け取れるはずだった保険金がもらえなくなるおそれがあります。
そのため、被害を確認したら、できるだけ早く保険会社に連絡して手続きを進めることが大切です。
保険会社に申請しても、保険金がすぐに支払われるわけではありません。まず被害状況の現地調査が行われ、その調査結果をもとに報告書が作成されるなどの手続きが必要です。これらの過程には時間がかかるため、実際に保険金が支払われるまでに一定の期間を要します。保険金の支払いをできるだけ早く受けたい場合は、なるべく早めに申請することが大切です。
また、リフォーム工事に取りかかる前には、被害箇所の写真をできるだけ多くかつ詳細に撮影しておくことが重要です。
損害の証拠が残っていない状態で修理を進めてしまうと、保険申請が通らなくなる可能性があります。
保険金を確実に早く受け取るためには、被害を受けた際の確実な記録と早めの申請が重要です。
修理費用が免責金額を超えていること
火災保険には免責金額が設定されている場合があるので注意が必要です。
免責金額とは、簡単に言うと「保険で補償される損害であっても、修理費用がこの金額以下の場合は自己負担となり、保険金は支払われない」という金額です。
火災保険の免責金額には、「フランチャイズ方式」と「免責方式(エクセス方式)」があります。
・フランチャイズ方式:損害額が免責金額以下の場合には保険金が支払われず自己負担。免責金額以上の場合は損害額全ての金額が保険金として支払われる
・免責方式:設定した免責金額以下の場合は自己負担、超える場合はその差額が支払われる
具体的に見ると、免責金額が20万円のフランチャイズ方式の場合、19万円までなら全て自己負担、25万円であれば全て保険金で支払われることになります。
免責金額が10万円の免責方式の場合、9万円のリフォームであれば保険金は支払われませんが、15万円のリフォームであれば差額となる5万円が支払われることになります。
免責金額や方式の設定内容は保険会社や契約プランによって異なるため、事前にご自身の火災保険契約内容をしっかり確認しておくことが重要です。
火災保険リフォームの条件を満たすためのチェックポイント
火災保険を利用して自然災害等で被った被害箇所のリフォームをする際は、次の5つのポイントを必ずチェックするようにしましょう。
【チェックポイント】
・契約内容の確認
・被害内容の証明
・修理の目的(災害・事故で被害を受けた建物の原状回復を目的にリフォームであること)
・保険会社への事前連絡・承認
・修理費用が免責金額を超えていること
まず、火災保険は契約内容によって補償範囲や免責金額などが異なるため、リフォームを行う工事が補償対象となるものか契約内容を事前に確認することが重要です。
実際に被害を受けた場所の写真は、被害状況を正確・客観的に証明する上で欠かせません。保険会社の審査でも必要となるため、被害を受けた直後にしっかり撮影しておきましょう。
また、実施するリフォームは災害・事故で被害を受けた建物の原状回復を目的に行うものであることも大事なポイントです。仕様のグレードアップなどは対象外となるのでご注意を。
リフォームを行う場合、保険申請は修理開始前に行いましょう。保険会社の査定や承認を受けていない修理や事後申請だと認められない場合があります。
最後に、修理費用が免責金額を超えているかどうかも重要なチェックポイントです。実際の修理費用は、保険会社が現地で調査した後、被保険者がリフォーム会社に相談した際の見積もりや査定の段階で判明するのが一般的です。その金額が免責金額を超えていなければ保険金は支払われないため、金額が確実に超えるかどうかを確認するようにしましょう。
被害箇所を写真で証拠として残す条件
保険会社に申請する際に被害状況を正確に証明する被害箇所の写真は不可欠です。
【撮影のコツ】
・家の「外」と「中」を撮影する
・被害箇所は漏れなく撮影する
・周囲の状況も撮影する
・撮影日時も記録する
外からの建物の全景写真は可能な限り周囲4面を撮影します。浸水被害のある場合は、メジャー等をあてて全体を写した遠景と、目盛りが読み取れる近景を撮影します。
家の中の写真は、被害を受けた部屋ごとの全景写真と、被害箇所の「寄り」の写真を撮影するのがポイントです。床上浸水は居室等のフローリングの床面を基準にして浸水深や被害状況を撮影し、床下浸水は床下や基礎の内部が浸水したことがわかるものを撮影しましょう。
家の中も外も、「引き」と「寄り」の2つの写真を撮影するのが鉄則です。また、自宅周辺も撮影しておくと災害の状況が分かる証拠となります。
また、撮影した日時も合わせて記録しておきましょう。
火災保険リフォームの条件を満たした実際の事例
次に、火災保険でリフォームを実施した実例を見ていきましょう。
ケース①自然災害の影響による「雨漏り」
台風・竜巻などの風災によって建物の外側が破損して雨漏りが起こると、火災保険の対象となります。
・台風のために窓ガラスが割れて雨水が侵入した(風災)
・台風のために物が飛んできて壁が破損し、雨水が侵入した(風災)
・雹(ひょう)が降って屋根に穴があき、雨水が侵入した(雹災)
(引用:東京海上日動)
ケース②自然災害の影響による「屋根修理」
台風などの自然災害によって屋根が破損したような場合は、火災保険が適用されます。
・台風により屋根瓦が飛ばされた
・台風により物が飛んできて屋根に穴があいた
・大雪が降って、雪が積もり雪の重みで屋根が潰れた
・ひょうで屋根に穴があいた
(引用:東京海上日動)
条件を満たしていても注意すべき落とし穴
火災保険の補償対象となる被害であっても実際には保険金が支払われないケースもあるので注意が必要です。特に以下のような点は、申請の際によくトラブルになるので事前に確認しておきましょう。
【注意すべき点】
・保険会社への申請前のリフォーム
・原状回復を超えたグレードアップ
・証拠となる写真が不十分・不適切
・免責金額に満たない修理費
・自然災害等による損害ではなく、経年劣化や老朽化との判断
上記の中でも特に注意したいのが、経年劣化や老朽化と判断され、保険金が支払われないケースです。
火災保険での補償は、突発的・偶然な災害や事故による損害のみが対象となります。特に古い住宅の場合、外壁のひび割れや雨どいの破損、雨漏りによるクロスや床の破損などは自然災害による損傷ではなく、長年の使用や自然な劣化によるものと判断されてしまうケースが多いです。
保険金の支払い対象と認定されるためには、被害の原因が突発的・偶発的であることを証明できる資料や写真を準備しておくことが重要です。
まとめ|火災保険リフォームの条件を理解して賢く活用しよう
自然災害や突発的な事故によって住宅、あるいは家財に被害が生じた場合、火災保険を活用したリフォームはお客様にとっても、リフォーム会社にとっても非常に有効な手段です。
ただし、補償が受けられるかどうかは契約内容や被害の状況、申請手続きの進め方など複数の条件をクリアしていなければならず、スムーズに保険金を受け取るためには正しい知識と事前の準備が欠かせません。
リフォーム会社としては、火災保険の仕組みを正しく理解した上で、お客様に対して分かりやすく的確な説明を行い、申請サポートや書類準備まで含めたトータルな提案を心がけましょう。
火災保険の活用提案を通じて、お客様の安心感と満足度の向上、そして自社の信頼性と成約率アップの両立を実現していきましょう。