「建坪でいくら?」というお施主様からの質問に、どう答えていますか?
失注と赤字を防ぐ、図面を使った正確な屋根・外壁面積の算出方法から、顧客が納得するトーク例までを徹底解説いたします。
貴社の状況に合う適切な、 DroneRooferの活用方法がわかります。
- ・外装点検を誰でも、安全に実施したい
- ・積算や見積など提案準備を効率化したい
- ・リフォーム提案で他社と差別化したい
目次
「建坪〇〇坪でいくら?」への回答が、会社の信頼と利益を左右する
塗装会社にとって、正確な見積もり内容をお客様に分かりやすく伝えることは非常に重要です。
お客様から「建坪30坪でいくらですか?」と尋ねられた際に、「だいたい〇〇万円くらいです」といった経験や勘に頼った回答をしてしまうと、会社の利益を守るうえでも、お客様からの信頼を維持するうえでも、リスクが生じる可能性があります。
経験と勘に依存する「どんぶり勘定」が引き起こす3つのリスク
長年の経験則に基づく「どんぶり勘定」で概算を提示している会社も少なくないですが、これは会社の利益を圧縮し、失注の原因にもなり得ます。
1. 失注リスク(顧客の不信感)
概算と最終見積もりの間に乖離が発生すると、「話が違う」「信用できない」と施主様の不信感を招きます。相見積もりの際、金額以前の信頼関係の崩壊が起きてしまう要因となります。
2. 赤字リスク(材料費のロス)
不正確な塗装面積の算出は、塗料の必要量の過不足に直結します。
・過少算出:材料の追加発注による工期の遅延、職人の手待ち時間、緊急配送コストが発生します。
・過大算出:余剰塗料の廃棄コストが発生し、会社の純利益を圧迫します。わずか数㎡の誤差でも、年間を通して見れば数十万円以上の無駄な損失となり得ます。
3. 属人化リスク(会社の成長阻害)
積算業務がベテランの「経験と勘」に依存することで、若手や新人の育成が難しくなり、業務の効率化と標準化が進みません。会社の成長速度は、最も非効率な業務プロセスによって決定されます。
本記事は、これらのリスクを根本から断ち切り、貴社の「提案の質」と「利益率」を同時に最大化するための、具体的かつ即実践可能な積算と提案のDX(デジタルトランスフォーメーション)を解説します。
この記事で解決する、積算と提案の「質」に関する3つの課題
1. 顧客への提案力強化
施主様からの「建坪でいくら?」という質問に対し、論理的かつ自信を持って回答し、専門家としての信頼を勝ち取る方法がわかります。
2. 積算精度の標準化
新人や若手でも精度の高い面積算出ができるよう、図面の見方から具体的な計算方法までを体系的に学べます。
3. 競合との明確な差別化
「価格」だけでなく「提案の質」で選ばれるための、ドローンなどの最新技術を活用した付加価値の高い現地調査の手法を理解できます。
「建坪」「延床面積」「塗装面積」の絶対的な違い
施主様との認識齟齬を防ぎ、プロとして信頼を得るためには、まず基本となる3つの「面積」の定義を明確に区別し、それを論理的に説明できることが必須です。
1. 建坪(たてつぼ):概算の根拠にすべきではない、最も曖昧な言葉
「建坪」は建築基準法上の正式な用語ではなく、一般的に「建物を真上から見たときの水平投影面積」、つまり1階の床面積に近い数値を指します。
・危険性:施主様が最も口にする言葉ですが、外壁面積との相関性が低く、業者間でも解釈が分かれるため、これを起点に見積もりの話を進めるのは危険です。
2. 延床面積(のべゆかめんせき):概算係数算出の「出発点」
「延床面積」は、建物の各階の床面積を合計したものです。建物の規模を示す公的な数値であり、塗装面積を概算する際の出発点となります。
・使用上の注意: あくまで床面積の合計であり、壁や屋根の面積ではないため、「延床面積×単価」での見積もりは、最終的な金額とは大きく乖離します。
3. 塗装面積(とそうめんせき):見積もり金額の「唯一の正当な根拠」
「塗装面積」こそが、塗料の必要量を決定し、見積もり金額を算出する上での唯一、かつ最も重要な根拠です。
・定義:外壁や屋根の総面積から、窓やドア、換気扇フードなどの「開口部」や、塗装しない部分の面積を正確に差し引いた、実際に塗料を塗布する面積(㎡)です。
屋根・外壁面積の正確な算出方法4選
塗装面積を算出する方法は複数ありますが、精度と効率を両立させ、失注リスクと赤字リスクを最小限に抑えるためには、最も正確な方法を選択する必要があります。
方法1:延床面積 × 係数(1.2~1.7)
最も簡易的な方法で、電話での問い合わせなど、概算を素早く伝える際に用いられます。
メリット:計算が非常に簡単でスピーディー。
デメリット:精度が最も低い。同じ延床面積でも、総二階の家と凹凸の多い家では実際の塗装面積が大きく異なり、最大で30%以上の誤差が出る可能性もあります。あくまで初期の目安と割り切り、この数値で見積もりを確定させるのは避けるべきです。
方法2:建物の外周 × 高さ
メジャー(スケール)があれば、現場で比較的簡単に算出できる方法です。
メリット:係数計算よりは精度が向上し、根拠を示しやすくなります。
デメリット:高所の正確な測定が困難であり、窓やドアなどの開口部を一律の割合で差し引くため、依然として誤差が生じます。特に窓が多いデザインの住宅では、面積を過大に見積もってしまうリスクがあります。
方法3:図面(立面図・平面図)からの拾い出し
設計図面があれば、最も正確な面積を手計算で算出できます。
メリット:開口部も含めて正確な面積を計算でき、施主様への説明においても客観的な根拠として非常に有効です。
デメリット:図面がない、あるいは増改築によって現状と図面が異なっている場合には使えません。また、拾い出しには一定の知識と時間が必要です。
方法4:ドローンソフトウェアによる計測
最新テクノロジーを活用し、精度と効率を両立させる方法です。
メリット:人が立ち入れない高所や複雑な形状の建物でも、安全かつ短時間(一般的な戸建てで15〜20分程度)で計測可能です。取得したデータは、そのまま客観的な診断レポートとして施主様への提案資料に活用でき、絶大な説得力を持ちます。
デメリット:ドローン本体や専用ソフトの導入コスト、そして運用ノウハウが必要です。
図面からの正確な拾い出しをする方法
図面からの拾い出しは、ドローンがない場合の最も正確な算出方法であり、積算のロジックを理解するための基礎技術です。
ポイント1:基本の計算式「屋根投影面積 × 勾配伸び率」を覚える
屋根面積の算出は、この一つの式に集約されます
・屋根投影面積:屋根を真上から見たときの面積。平面図から算出します。
・勾配伸び率:屋根の傾斜による面積の増加率。立面図から勾配を読み取り、係数を適用します。
ポイント2:「平面図」から軒の出を含めた投影面積を算出する
1. 平面図を用意し、1階と2階の屋根がかかっている部分の寸法を確認します 。
2. 外壁の寸法に、「軒の出」の長さを加えます。軒の出は一般的に450mm〜600mm程度ですが、図面で正確な数値を確認することが重要です 。
3. (外壁の縦の長さ + 軒の出 × 2)×(外壁の横の長さ + 軒の出 × 2)で、全体の投影面積を計算します。下屋根がある場合は、それも忘れずに加算します 。
ポイント3:「立面図」から勾配を読み取り、「勾配伸び率」を適用する
1. 立面図に記載されている屋根の勾配記号(△)を探します。通常、「水平10に対して高さがいくつか」で表記されます(例:4/10 = 4寸勾配)。
2. 読み取った勾配に応じて、以下の勾配伸び率を掛け合わせます。
| 屋根勾配 | 勾配伸び率(係数) |
|---|---|
| 3寸勾配 | 1.044 |
| 4寸勾配 | 1.077 |
| 5寸勾配 | 1.118 |
| 6寸勾配 | 1.166 |
【計算例】
投影面積が80㎡、勾配が4寸の場合:
80㎡(投影面積) × 1.077(4寸勾配の伸び率) = 86.16㎡ が、より正確な屋根面積となります。
顧客の信頼を獲得する見積もり説明トーク
「建坪でいくら?」と聞かれた時こそ、専門知識を披露し、信頼を獲得するチャンスです。
ポイント1:「なぜ建坪ではダメなのか」をロジックで示す
【トーク例】
「お問合せありがとうございます。〇〇様の仰る通り、よく『建坪』で費用を尋ねられるのですが、実は塗装工事の正確な金額は『建坪』では算出が難しいのです。と言いますのも、『建坪』は1階の床面積を指す言葉でして、外壁の面積は、家の形や窓の数で一軒一軒まったく違うからです。もしよろしければ、一度お住まいを拝見し、正確な塗装面積を計測した上で、根拠のあるお見積もりを提出させていただけないでしょうか?」
ポイント2:面積の算出根拠を写真・図面で「可視化」する
言葉だけでなく、客観的なデータを見せることが納得感に繋がります。
【トーク例】
「こちらが先ほどドローンで撮影したお住まいの写真と、それを基に算出した塗装面積です。この壁面が〇〇㎡、こちらの面が△△㎡で、窓などの塗装しない部分を差し引くと、合計で□□㎡となります。この□□㎡という正確な数字を基に、塗料の必要量を計算いたします。」
ポイント3:価格の内訳を詳細に説明し、透明性を担保する
「一式」という言葉を避け、項目ごとに単価と数量を明記することが信頼の証です。
【トーク例】
「お見積書の内訳ですが、まず工事に必須の『足場代』、これが〇〇㎡で単価が△△円です。次に『高圧洗浄』、そして『塗装費用』です。塗装は、下塗り・中塗り・上塗りの3回塗りが基本でして、それぞれの工程がこちらになります。使用する塗料は〇〇メーカーの『△△』という製品で、耐久年数は約〇年です。」
積算精度と利益率を向上させる:ドローン活用による現地調査のDX
従来の現地調査や積算方法では、時間や労力がかかるだけでなく、どうしても誤差が生じてしまうという課題があります。こうした状況に対し、ドローンと専用ソフトウェアの活用は、計測の「高精度化」や「効率化」だけでなく提案の「高付加価値化」につながります。
メリット1:高精度な面積算出で、材料ロスを削減
手作業での計測誤差は、時に5%以上にもなります。仮に塗装面積150㎡の現場で5%の誤差が出れば、7.5㎡分(塗料缶1つ分に相当)の無駄なコストが発生します。ドローンを活用した積算ソフトによる高精度な計測は、こうした見えない損失をなくし、会社の利益率を直接的に改善します。
メリット2:現地調査の時間を短縮し、提案活動に注力
従来、1時間以上かかっていた現地での実測作業が、ドローンを使えばわずか15分程度で完了します。これにより創出された時間を、施主様へのヒアリングやより丁寧な提案資料の作成に充てることができ、営業活動の質を向上させます。
メリット3:屋根や高所の劣化状況も可視化。診断レポートで提案の説得力を最大化
施主様が普段見ることのできない屋根のスレートの割れや、雨樋の詰まり、高所の外壁のひび割れなどを、高解像度の写真で見せることができます。客観的な劣化状況を「見える化」した診断レポートは、追加の補修工事や高付加価値な塗料の提案に強い説得力を持たせ、受注単価の向上にも貢献します。
弊社が提供する「DroneRoofer」では、撮影をした写真から屋根・壁の面積を出すことが可能です。面積計算アプリを検討されている方はぜひ一度お問い合わせいただけますと幸いです。
まとめ|正確な積算と論理的な説明力こそが、信頼の証
「建坪でいくら?」という施主様の問いは、塗装業者の専門性と誠実さを示す機会になります。
建坪と塗装面積の違いを明確に説明し、図面やドローンなどを用いて算出した根拠のある正確な面積を提示すること。そして、その面積に基づいて算出された透明性の高い見積書を提出すること。この一連の流れが、価格競争から一歩抜け出し、顧客から「信頼」で選ばれるために重要です。
「どんぶり勘定」から脱却し、正確な積算に基づいた提案を実践することで、会社の利益を守り、地域で最も信頼される塗装会社を目指しましょう。



